本読みの感想(ネタバレあり)を中心に、日々のことごとを。
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思いこみをひっくり返す(アブダラと空飛ぶ絨毯)
2007年01月18日 (木) | 編集 |
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『アブダラと空飛ぶ絨毯』読了。
『魔法使いハウルと火の悪魔』の続編(「空中の城」シリーズ2作目)。

ブリティッシュなファンタジー世界はどこへやら、今回はアラビアンなファンタジー世界から始まる。
魔法の絨毯に、ジンニー(精霊)入りの瓶、王女をさらうジン(魔神)、砂漠の盗賊と、王道アイテム&キャラがぞろぞろ。
人々は、会話に美辞麗句をたっぷり盛り込むならわしがあり、もどかしいやら可笑しいやら。
「砂漠の王よ」「旅人の真珠たるお方」「知恵の大御所殿」「鋭敏なる嗅覚をお持ちの王子殿」「ラクダの群れの大将殿」「砂漠の詩人殿」「世迷い言の王者殿」……これ、すべてワンシーンの会話で、アブダラがある1人の絨毯売りに呼びかけた言葉(皮肉含む)。
二人称=「あなた」、なんて陳腐なことは言わない。
そういえば、むかし読んだ『千一夜物語』でも同じような美辞麗句だらけの会話だったっけ。
バザールの様子や、食べ物のメニュー、庭園のあり方もそうだが、最もアラビアンムードをつくり出しているのは、この会話。
うまいなあ。

愛しの王女を追って、アブダラはとうとうインガリー国(ハウルやソフィーの国)までたどり着く。
何をやってもイマイチうまくいかないアブダラだが、意外と順応力は高く、習慣の違いにわりと早く馴染んでいく。
つまり、会話はシンプルに!と。
(それでも、インガリー国の人々からすればまどろこっしいのだけれど)
このへんは、空想を膨らませることが得意なアブダラならではの柔軟さか。
押しが弱くて、人が良くて、空想がに逃げ込むのが好きなアブダラ。
けしてヒーローらしからぬ彼が、一途さゆえに危険に飛び込んでいくさまは、胸がすく。
ヒロイン役の王女も、けっしてヒロインの型にはまっていないところが愛らしい。
そういえば、ハウルも臆病男で、ソフィーは勝ち気な女性だった。
ダイアナ・ジョーンズさんは、弱い女が強い男に守られるという伝統的価値観をひっくり返すのがお好み、なのかな?

ところで、ハウルとソフィーはいつになったら出てくるの? とやきもきさせられる。
人々の話題には上っているのに、ちっとも姿を現さない。
が、最後の最後に種を明かされてみれば、ハウルもソフィーもカルシファーも、そしてジャスティン王子まで、ちゃーんと早くから活躍してました、というオチが秀逸。
それを知ってから、もう一度読めば、また別の楽しみも味わえることだろう。

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