本読みの感想(ネタバレあり)を中心に、日々のことごとを。
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心の機微を描く(夜想、パラダイスルネッサンス)
2005年09月15日 (木) | 編集 |
久々に、谷瑞恵『夜想』『パラダイスルネッサンス』を読む。
ライトノベルが確立したジャンルとして、広く認識され始めたころの作品。

『夜想』は、中世から近世の、魔女狩りが横行するヨーロッパ(ドイツ?)が舞台。
「魔城」の侯爵、フランツ。
その悪魔を祓いに来た、悪魔の印を持つアンジェラ。
自分を悪魔の化身だと言う少年ベル。
真実を見抜く目を持つ、盲目の執事。
二人なのではなく「ひとり」の、双子のメイド。
狼に嫁いだ、侯爵の妹。
登場人物はみな、どこか歪んでいる。
この歪みが、物語全体に漂う雰囲気をうまくつくっている。

キリスト教徒である民衆は、しかし一方でいにしえからの信仰にも怯えている。
つまり、人が自然と折り合いをつけて生きていくために必要な、犠牲。
狼との共存のために、生け贄が必要だという、俗信。
もちろん、表立ってはそんな「異教」は信仰できない。
だから、人々は領主にその役割を押しつけ、沈黙を守っている。
後ろめたさによって保たれている、危ういバランス。
物語の重要な背景であるこの状況が、みごとに描かれている。
まず、そこが興味深い。

この状況の渦中であるフランツと、アンジェラ。
ふたりとも、それに対してじたばたと抵抗するのではなく、冷静に対しているのだが、その様はまるでちがう。
あたかも楽しんでいるかのようなフランツ。
あきらめきっているアンジェラ。
ふたりの心は、すれ違い、絡み合う。
視点はアンジェラなので、彼女の描写がメインなのは当然だが、その心理がとても丁寧に描かれている。
読みながら、彼女の絶望の深さを思い知り、胸が痛くなってしまうほどだ。
悪魔とののしられ、愛を知らないアンジェラが、愛を信じてみようかと思えるまでの、心の揺れ動きは読み応えがある。

現実的手法で悪魔の存在を否定するアンジェラに、最後に現実主義では割り切れない事態が。
ファンタジーとしての仕掛けもそっとしのばせてある。
淡々としていて派手さはないが、わたしの好きな一品である。

『パラダイス〜』は、SFファンタジーによくある、科学文明が失われ荒廃した世界が舞台。
謎の伝染病がはやり、人々はいつ我が身にふりかかるかもしれない死におびえている。
主人公たち3人は、「楽園」を求めて旅に出る。
個とは何か、生と死とは、そもそも「楽園」とは、幸福とはなんなのかを、それぞれに思い、探りながら。

人が人に惹かれあうこと、そうなることへの心の変化、ある特定の人々を差別し虐待すること、意味のない優越感、自分の居場所を求めること、科学と自然……多様な要素が盛り込まれているが無理なくまとめられている。
ファンタジーとしての「しかけ」もけっこううまい。
それだけに、最後がちょっと強引なのがもったいないなーと思ってしまうのだけど。

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