本読みの感想(ネタバレあり)を中心に、日々のことごとを。
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個は全、全は個?(沼地のある森を抜けて)
2005年10月18日 (火) | 編集 |
梨木香歩『沼地のある森を抜けて』読了。

最初は、ちょっとホラーっぽい不思議さが、面白いな、と思って読んでいたら、
だんだん難しくなってきて、まいってしまった。
一言でいうと、「個と全」の話?
印象として、『ぐるりのこと』の系譜にあたる作品のように思う。

父と母、つまり雄雌がいて生まれる人間であるはずの久美(やフリオ)。
ところが、普通の生殖活動とは異なる生まれ方をする種族だった??
「男」としての性を否定し、でも「女」になりたいわけでもない風野さん。
人間の性を考えてみたり、酵母や粘菌の繁殖を考えてみたり、作中人物たちがあちこちに意識を飛ばしながら考察していく、「生」というもの。
「個」を超越した、種族とか命とか自然とかそういうものの「生」?
ひとつひとつの「個」は滅びても、永遠につなごうとする「命」?
そのつなぎ方のひとつの形が、沼から何度も生ま出る人々?
合間に挟まる、「シマの話」も、どう読み解いていいのか……
正直、難しくてあまり理解できなかった。


ただ、漠然と思うのは、ずっと以前から、私自身が気になっていたことと多少重なっているのかもしれない、ということ。
動物であれ植物であれ、生物にとって「子孫を残す=自分の遺伝子を残す」ことが、
根本的な目的・本能だとしたら、なぜ私たちには余計な「意思」があるのだろうか。
たとえば、子供はいらない、と考える人々もいるけれど、
それはもはや、生物として間違っているのではないか?
なぜ、人間はそういう思考をできるようになってしまっているのか?
「私」という体を構成している「細胞」が、日々生まれ、死んでいくように、
自分で考えて行動しているように思っている「私」も、実は何か大きなものの一部分に過ぎないのではないだろうか。
じゃあやっぱり、何のために私たちは「思考」するのだろう……


ところで、この『沼地〜』に描かれている「ぬか床に縛られている女性たち」の姿は、
梨木作品にたびたびあらわれる「『家族』の閉鎖性・独自性」というテーマ。
一族の伝統から逃れられず、嫌だと思いながらぬか床をかき回し続けるのは、やはり「個と全」の対比なのだと思う。
そして、その「代々の女性達」の、「果てしないエネルギーの集積」と「呪縛」(p110)のくだりは、『からくりからくさ』の織り子たちに通ず。
久美は紀久に通ず。
そういう風に見ると、たしかに『沼地〜』は『からくり〜』の系譜にもあるのか。

***
感想書き終わったので、『沼地〜』に関する記事を見ること解禁。
てなわけで、下記拝見しました。
ブログ「読書日和」内「『沼地のある森を抜けて』梨木香歩著」
ブログ「月灯茶会別館」内「沼地のある森を抜けて (梨木香歩)」
コメント
この記事へのコメント
はじめまして!
TBさせていただきました!
『沼地・・・』は確かに一度読んだだけでは理解が出来ない部分も多いと思います。
が、全体的に摩訶不思議奇想天外、ぬか床と遺伝子という突拍子もない組み合わせが気に入りました!
2005/10/21(金) 10:06:49 | URL | double face-d #mQop/nM.[ 編集]
TB&コメントありがとうございます!
doubleface-d様。
いらっしゃいませ。ありがとうございます。
突拍子もないのですけど、作中ではあたかも必然性を持つように描かれているのが、面白いですよね。
この奇妙さ、不思議さが心地よくって好きなんですけど、好きだからこそ、ちゃんと理解できないのがもどかしくって……
2005/10/22(土) 00:11:10 | URL | 鳥乃 #jgJNn0FY[ 編集]
はじめまして
Youminといいます
私も梨木香歩さんは大好きなのですが
まだ、「沼地のある森を抜けて」は読んだことがありません
単行本でありますか?
鳥乃さんのレヴュー読んだら
むしょうに読みたくなってきました♪
2007/10/21(日) 00:39:20 | URL | Youmin #-[ 編集]
単行本ありますよ
Youmin様、いらっしゃいませ。
私の感想を元に興味を持っていただけるなんて、光栄です!

「沼地〜」は白を基調にした美しい装幀の単行本です(新潮社)。
文庫にはまだなっていないと思います。
かなりボリュームのあるお話ですので、
じっくり梨木さんの世界を楽しめますよ。
2007/10/21(日) 00:53:36 | URL | 鳥乃 #jgJNn0FY[ 編集]
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2005/10/21(金) 10:04:34 | double face-d