2007年02月09日 (金) | 編集 |
上橋菜穂子『月の森に、カミよ眠れ』読了。
異類婚姻譚、しかも蛇神との、ときたら、これは読まずにおれないでしょう(個人的なツボですから)。
三輪山型伝承、苧環、ああ、懐かしい。
モデルは大和朝廷に取り込まれつつある、小さな地方集落。
カミや精霊との絆を断って、水田を拓き効率よく作物を得ようとする。
ヒトの理に従って、ヒトの力だけで生きていこうとする。
古い絆を守ろうとする者と、新しい理屈を持ち込む者。
どちらが正しいともいえない、葛藤。
「歴史上の出来事」としては、「この地方でも稲作が始まりました」なんて一言で片付いてしまうかもしれない。
けれど、それを直に体験する人にとっては、そんな単純な変化ではないわけで。
そこのところを、丹念に想像し、物語として構築し、描写していくところは、さすが上橋さんだ。
もちろん、この作品はフィクションだし、ファンタジーの手法をとっているから、「事実あったこと」でもない。
が、そこには変化に翻弄される人びとの息づかいが聞こえてくるようなリアルさがある。
そして、「あなただったらどうする?」と、読者に問いかけてくる、強い力がある。
カミが我々に何をしてくれる?
という問いかけは、衝撃的。
カミとの絆を守っていくなら、収穫不足に悩まされる。
ギリギリの生活に耐えて、カミは褒めてくれるのか?
カミからの見返りなどあっただろうか?
森を拓き、田を耕し、稲を育てれば、食は安定する。
なぜそれをカミは邪魔するのか?
カミとの絆に固執する必要も、意味もあるのか?
他の村では、もう稲を育てている。
それでも、村は滅んだりしていない。
カミは、本当にそれほど恐れるものなのか?
そう言われると、反論できない。
でも、何か違う、とも思う。
その違和感はきっと、ヒトもカミも自然の一部なのに、というところからくるのだろう。
ヒトも自然の一部なのに、なぜか自然を自分とは異なるものとして見ようとする。
距離を置こうとする。
自然を利用し、支配しようとするなら、きっと無理が生じる。
最初の小さな変化が、ずるずると大きな変化につながっていく。
やがて、取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。
老婆となったキシメは、それを示唆する。
幼子に「恐怖感」とともに、自然やカミへの「畏敬の念」を教えることで、
細く細くなった絆を、それでもなんとか繋いでいくために。
今、日本に住んでいる人なら、きっと皆が感じている、「崩壊の危機」。
安定を取り返せるかどうかは、これからにかかっている。
わたしたちの直面しているのは「今」だけれど、
わたしたちの行動は「ずっと後世」にまで影響を与える。
なにげない歴史や社会の変化を、表面上の「AがBに変わった」というだけでなく、
「その時、そこで、その出来事に直面している人が、どんなふうに悩み、考え、行動したか」を捉えることで、「今」に置き換えられること。
歴史を振り返るということは、そういう「学び」なのかもしれない、ということ。
そんな気づきを与えてくれる一冊だった。
異類婚姻譚、しかも蛇神との、ときたら、これは読まずにおれないでしょう(個人的なツボですから)。
三輪山型伝承、苧環、ああ、懐かしい。
モデルは大和朝廷に取り込まれつつある、小さな地方集落。
カミや精霊との絆を断って、水田を拓き効率よく作物を得ようとする。
ヒトの理に従って、ヒトの力だけで生きていこうとする。
古い絆を守ろうとする者と、新しい理屈を持ち込む者。
どちらが正しいともいえない、葛藤。
「歴史上の出来事」としては、「この地方でも稲作が始まりました」なんて一言で片付いてしまうかもしれない。
けれど、それを直に体験する人にとっては、そんな単純な変化ではないわけで。
そこのところを、丹念に想像し、物語として構築し、描写していくところは、さすが上橋さんだ。
もちろん、この作品はフィクションだし、ファンタジーの手法をとっているから、「事実あったこと」でもない。
が、そこには変化に翻弄される人びとの息づかいが聞こえてくるようなリアルさがある。
そして、「あなただったらどうする?」と、読者に問いかけてくる、強い力がある。
カミが我々に何をしてくれる?
という問いかけは、衝撃的。
カミとの絆を守っていくなら、収穫不足に悩まされる。
ギリギリの生活に耐えて、カミは褒めてくれるのか?
カミからの見返りなどあっただろうか?
森を拓き、田を耕し、稲を育てれば、食は安定する。
なぜそれをカミは邪魔するのか?
カミとの絆に固執する必要も、意味もあるのか?
他の村では、もう稲を育てている。
それでも、村は滅んだりしていない。
カミは、本当にそれほど恐れるものなのか?
そう言われると、反論できない。
でも、何か違う、とも思う。
その違和感はきっと、ヒトもカミも自然の一部なのに、というところからくるのだろう。
ヒトも自然の一部なのに、なぜか自然を自分とは異なるものとして見ようとする。
距離を置こうとする。
自然を利用し、支配しようとするなら、きっと無理が生じる。
最初の小さな変化が、ずるずると大きな変化につながっていく。
やがて、取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。
老婆となったキシメは、それを示唆する。
幼子に「恐怖感」とともに、自然やカミへの「畏敬の念」を教えることで、
細く細くなった絆を、それでもなんとか繋いでいくために。
今、日本に住んでいる人なら、きっと皆が感じている、「崩壊の危機」。
安定を取り返せるかどうかは、これからにかかっている。
わたしたちの直面しているのは「今」だけれど、
わたしたちの行動は「ずっと後世」にまで影響を与える。
なにげない歴史や社会の変化を、表面上の「AがBに変わった」というだけでなく、
「その時、そこで、その出来事に直面している人が、どんなふうに悩み、考え、行動したか」を捉えることで、「今」に置き換えられること。
歴史を振り返るということは、そういう「学び」なのかもしれない、ということ。
そんな気づきを与えてくれる一冊だった。
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