本読みの感想(ネタバレあり)を中心に、日々のことごとを。
世界を構築する力(西の善き魔女1〜6巻)
2006年01月07日 (土) | 編集 |
昨年末のことですが、荻原規子『西の善き魔女』文庫版1〜6巻一気に読み返し、をしてました。
1・2・3・4・6・5の順=単行本での発表順で。

改めて思うのは、構成が実にしっかりしている、ということ。
作品全体を通して、「西の善き魔女世界」の世界観がとても実在的。
細部の描写も丁寧なので、宗教や文化が生活に染み込んでいる様がよく出ている。
最重要なキーワード「禁忌」の使い方もうまい。
全体に、実にリアルなのだ。

そして、その積み重ねてきたリアルさゆえに、最後の詰めのところで、キャラの驚きが弱いのが、非常にもったいない。
通して読んでみても、やっぱり本編最後にあたる6巻の展開の早さによる慌ただしさが残念でならない。
女王との対面によって、とうとう謎が融解するところが、なんかあっさりしている。
フィリエルが女王家の血筋だと判明したときのような、驚愕・困惑・混乱、がほしかった。
(先日の最終巻の感想でリアリティーの消失と書いているけど、これに通ず、です)


さて、主人公のフィリエルをはじめ、キャラクターの性格・役割が、魅力的だ。
フィリエルは、彼女に関わる人々が口々に言うように、ころころと考えが変わって、呆れるほど意外なことを言い出して、そして一途だ。
いやはや、まとめて読み返してみて、本当にひどい気まぐれ屋さんだとびっくりした。
でも、一見めちゃくちゃに思えるけれど、すべてはルーンのために。
その一途さ、たくましさが愛らしい。
最初、巻き込まれ型だったヒロインは、いつのまにか飛び込み型のヒロインへ。
それがフィリエルの成長だったと言っていいと思う。

全員あげるわけにいかないので、もう一人。レアンドラを。
構図としては、正真正銘の「敵役」であるレアンドラ。
でも、読み返してみたら、レアンドラは、ただの意地悪な姉ではなかった。
彼女は、彼女なりにあらゆる物事がよかれと考えを巡らしていたし、実行する。
ちょっと過激で、おいたが過ぎたりもするけれど、やっぱり一途なのかもしれない。
それが理解できた今回は、最後にあっさり考えを翻して、軍隊を手放したときの彼女を、輝いている、と感じた。
本当に、彼女はいろんな意味でいい女だと思う。


最後に。
5巻は、フィリエルが南部にいる間、アデイルがなにをしていたか、の話。
文庫版では時系列にあわせて本編の4巻・6巻の間に入ったけれど、本来は外伝なので、後から発表された話だ。
今回、その順にあわせて読んでみた。
そして、しみじみ思うのが、そういったサイドストーリーもきちんと考え尽くされた上で、本編が書かれていたのだ、ということ。
本編で、いきなりユニコーンを連れて南部に現れるアデイルだけど、外伝を読めば納得の行動なのだ。

たぶん、荻原さんの頭の中には、ほかにもたくさんのサイドストーリーが詰まっていることだろう。
もしかしたら、グラール建国から何百年もの歴史が全部かも。
アニメ化の記念に、また短編を書かれているそうだけど、きっとそれも、たくさんあるストックの中から見せてくれるひとかけら、なのだろう。
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